糖尿病とは何か、どう向き合うか ─ 病気の基本から最新の治療まで

糖尿病は「血糖値が高い状態」が続く病気

食事でとった糖(ブドウ糖)は、血液に乗って全身の細胞に届けられ、エネルギーとして使われます。このとき、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、細胞の扉を開いてブドウ糖を取り込む手助けをしています。

糖尿病とは、インスリンの「量が足りない」あるいは「うまく働かない」ことで、血液中にブドウ糖があふれた状態(高血糖)が長期間続く病気です。一時的なものではなく、慢性的に続くことが問題の本質です。

日本では成人男性の約17%、女性の約9%が「糖尿病が強く疑われる」状態にあるとされ(2023年国民健康・栄養調査)、まさに身近な病気のひとつといえます。

糖尿病は2種類ある

糖尿病は大きく2種類に分けられます。

1型糖尿病

免疫の異常によって膵臓のインスリンを作る細胞が壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。子どもや若い世代に多く、インスリン注射による補充が必須となります。

2型糖尿病

日本の糖尿病患者の約95%を占めます。遺伝的な体質に加え、食べ過ぎ・運動不足・肥満・ストレスといった生活習慣が重なって発症します。「食べ過ぎだから仕方ない」と思われがちですが、体質の影響も大きく、決して自己管理の失敗だけが原因ではありません。

なぜ放置してはいけないの?

糖尿病の恐ろしいところは、初期にはほとんど自覚症状がない点です。「のどが渇く」「尿が増える」「疲れやすい」などの症状が出るころには、すでに高血糖が長期間続いていることが多いといわれています。

高血糖の状態が続くと、全身の血管が少しずつ傷んでいきます。特に細い血管(毛細血管)への影響が早く現れ、次の3つの合併症が知られています。

糖尿病網膜症

目の毛細血管が傷み、視力低下や最悪の場合は失明につながる。成人の中途失明の主要原因のひとつです。

糖尿病腎症

腎臓の細い血管がダメージを受け、腎機能が低下。進行すると透析が必要になることがあります。

糖尿病神経障害

手足のしびれ・痛み・感覚鈍麻が起こり、足の傷に気づかず壊疽(えそ)に至るケースもあります。


さらに動脈硬化が進むことで、比較的太い血管にも影響が起き、心筋梗塞・狭心症・脳梗塞といった命に関わりうる心血管疾患のリスクも高まります。

これらはいずれも「気づかないうちに進行する」のが特徴です。だからこそ、症状がなくても早期から血糖値をコントロールすることに大きな意味があります。

治療の目標は「血糖値の数字」ではなく「健康な生活」を守ること

日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、糖尿病治療の目標を以下のように定めています。

「合併症の発症・進展を防ぎ、糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質(QOL)を実現すること」

血糖コントロールの指標としてよく使われるのがHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。これは過去1〜2か月の平均的な血糖値を反映する検査で、合併症予防の観点から7.0%未満を目標とするケースが多く、状態によっては6.0%未満を目指すこともあります(低血糖のリスクがある方(特に高齢者)などでは8.0%未満を目標にする場合もあります)。

目標値は年齢・病歴・合併症の有無などを踏まえ、担当医と相談のうえ個別に設定することが大切です。

糖尿病の治療:3本の柱

1. 食事療法

すべての糖尿病治療の基本です。特定の食品を「絶対に食べてはいけない」わけではなく、バランスよく、食べ過ぎず、規則正しくが基本方針です。

2024年版ガイドラインでは、過体重・肥満を伴う2型糖尿病ではエネルギー摂取量を制限する食事療法が推奨されるようになりました。また、炭水化物の制限(糖質制限)については短期間(6〜12か月)での血糖改善に一定の有効性が認められていますが、長期的な安全性などを考慮して医師と相談のうえ取り組むことが大切です。

2. 運動療法

運動はインスリンの働きを改善し、血糖値を下げる効果があります。目安はウォーキングなどの有酸素運動を週150分以上(1回30分程度を週5日など)。加えて、筋力トレーニングを週2〜3回取り入れると、より効果的とされています。

3. 薬物療法

食事・運動療法だけでは目標に届かない場合、あるいは最初から血糖値が高い場合は薬を使います。近年、糖尿病の薬は大きく進歩しており、なかでも注目されているのがSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬です。

SGLT2阻害薬

余分な糖を尿から排出することで血糖を下げます。血糖改善だけでなく、心不全や腎臓病の進展を抑える効果も確認されており、心臓や腎臓に病気を持つ方に特に有用とされています。

GLP-1受容体作動薬

食欲を抑え、血糖を下げるホルモンの働きを強めます。体重減少効果もあり、心血管イベントの抑制効果も示されています。

これらの薬の組み合わせで、心臓病や腎臓病のリスクをさらに下げられることも、最新の研究で報告されています。

また、インスリン療法は1型糖尿病には欠かせないほか、2型でも血糖値が大きく乱れている場合には検討されます。

日常生活で気をつけること

定期的な受診と検査

症状がなくても、定期的にHbA1cや腎機能・眼底の検査を受けましょう。

禁煙

喫煙は血管をさらに傷め、合併症のリスクを大きく高めます。

血圧・脂質の管理

糖尿病と高血圧・脂質異常症が重なると、心血管疾患のリスクが急増します。

自己中断しない

薬や食事管理を自己判断でやめると、血糖値が急激に悪化することがあります。医師と相談の上調節が必要です。


糖尿病は「治る」病気ではありませんが、うまくコントロールすれば、普通の生活を長く続けられる病気です。「どうせ・・・」と諦める必要はありません。

また本当に重要なのは「生活習慣の改善」です。

当院では、糖尿病治療を多く経験してきた循環器内科専門医が、1人1人の生活スタイルに合った改善点や治療の提案をしていくよう心がけておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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