心不全とは
私たちの体は生まれた時から、心臓がポンプのように働き、血液を全身に送り出していることで生きています。血液は、体のすみずみまで酸素や栄養を運び、同時にたまった老廃物を回収する、という役割を担っています。
この心臓が「ポンプ」としてうまく働かなくなってしまうと、血液がうまく全身に回らなくなり、さまざまな不調が現れます。この状態を「心不全」といいます。
心不全はとても身近な病気
心不全と聞くと、「突然起こる苦しそうな病気」というイメージを持たれるかもしれませんが、実はとても身近で、慢性的に進行していく病気です。
特に高齢になるほど増えていき、生活習慣病とも深く関係しています。
日本は高齢化が進み、心不全になる人は今後ますます増えていくと言われています。
どんな症状が出る?
心臓の働きが弱くなることで、血液循環が悪くなることにより、さまざまな症状が現れます。
- 少し歩くと息切れする
- 体がだるい、疲れやすい
- 足がむくむ
- 咳や湿った痰が増える
- 体重が急に増える(水が体に溜まるため)
- 横になると苦しくなる(起座呼吸)
- 食欲がない、胃がもたれる
これらは一見、歳のせいかな?と思ってしまうような症状・変化もありますが、実は心不全のサインかもしれません。
心不全はなぜ怖い?
心不全は、じわじわと進行していく病気です。
初めは症状に気づかず、軽い症状が出始めて、徐々に悪化し、日常生活に支障が出るようになります。
そのうち入退院を繰り返すようになると、やがて内服薬や点滴では改善が難しくなってしまいます。
がんよりも悪い?心不全の予後
実は、適切な治療を受けていない心不全や、進行した心不全の予後は、一部のがんよりも悪いとされています。
心不全の難しいところは、心臓の機能が落ちるだけではなく、体力や足腰など、体の機能が全体的に低下していってしまうところです。
だからこそ、早期発見・早期治療がとても重要です。
どうして起こる? 〜心不全の原因〜
実は心不全というのは「病名」ではなく、心臓が疲れてしまいうまく働けなくなってしまった「状態」を表す言葉です。心臓に負担をかけてしまうさまざまな病気が存在すると、その状態が続き心臓が疲れてしまい、心不全へとつながります。
以下に原因の例を挙げます
心臓の病気によるもの
- 心筋梗塞
- 心臓弁膜症
- 心筋症
- 高血圧症
- 不整脈
- 先天性心疾患 など
心臓以外の原因
- 高血圧
- 糖尿病
- 肥満症
- 慢性腎臓病
- 動脈硬化性疾患
- 貧血
- 甲状腺疾患 など
これらの病気が、長い年月をかけて心臓に負担をかけ続けることで、徐々に心臓が弱っていき、心不全を発症します。
心不全の治療目的
心不全の目的は以下の通りです。
- 症状を軽減させること むくみや息切れ症状を軽減し、生活の質を上げることが大切です。
- 心臓の働きを改善させる、維持すること 適切な治療を行わないままでいると、心臓の機能は少しずつ低下していきます。
- 心不全の増悪や再発を防ぐこと 繰り返す病気であり、日々管理を行うことが重要です。
心不全に対する薬物治療は日々進歩しており、明確に有効である薬剤がわかってきています。
しかし心臓の状態によって使用すべき薬剤は変わっていきます。
専門医により、一人一人の状態に合わせて薬を組み合わせ、病状をコントロールしていく必要があります。
どんな検査が必要?
心不全が疑われる場合、まずは体の状態を詳しく調べるために、いくつかの検査を行います。
- 胸部レントゲン
心臓が大きくなっていないか、肺に水がたまっていないか、を確認します。 - 心電図検査
不整脈や、心筋梗塞の所見がないかなど、電気的に心臓の異常を調べます。 - 心エコー検査
心臓の動きや弁の状態をリアルタイムで確認します。心不全の重症度を評価するために非常に重要な検査です。 - 血液検査
心臓の負担の程度を見る”BNP”や”NT-proBNP”という数値を測定します。それ以外にも、心不全の原因となる貧血、甲状腺機能、糖尿病、腎機能障害の有無などを包括的に調べることができます。
心当たりある症状がある場合は早めの受診を
日本は高齢化が進み、心不全になる人は今後ますます増えていく病気と言われています。 心不全は早期に発見し、早期に治療を開始することで進行を防ぐことができます。
「最近、疲れやすくなったな」
「足がむくみやすくなった」
「だるいのが続いている」
そのような、少しでも気になることがあれば、ぜひ一度当院にお気軽にご相談ください。