

「最近、なんだかドキドキする」
「急に脈が速くなったり乱れたりする」
「なんだか胸の辺りがザワザワして不安になる」
そんな症状を自覚することがありませんか?
それは「心房細動」という不整脈のせいかもしれません。
ここでは「心房細動」について解説していきたいと思います。
心房細動とは?
心臓は、上下左右の4つの部屋に分かれており、上側にある2つの部屋を「心房」と呼びます。
「心房細動」とは、心臓の上側の部屋である「心房」が痙攣するように小刻みに動いてしまい、心臓の拍動のリズムが乱れてしまう、不整脈の1つです。
心房細動になると、脈が非常に速くなったり遅くなったり、不規則になります。
現在、日本では100万人以上がこの不整脈を抱えていると言われています。年齢を重ねると発症するリスクも上がり、思ったより身近に存在する不整脈であり、しっかりと治療を行うべき疾患でもあります。
なぜ心房細動は治療が必要?
心房細動自体は、命に直結するような不整脈ではありませんが、治療を行うべき理由があります。それは、発症することで大きな合併症につながってしまうためです。
大きな合併症として、「脳梗塞」と「心不全」が挙げられます。
脳梗塞(心原性脳塞栓症)
心房細動を発症すると、心房が震えてしまい、心房内で血液の流れが悪くなり、心房の中で血のかたまり(血栓)ができてしまうことがあります。その血栓が血流に乗って流れてしまうと、脳梗塞を引き起こしてしまいます。
心房細動によって引き起こされる脳梗塞は、他の原因で起こる脳梗塞よりも広範囲にダメージを受けること多く、大きな後遺症を残してしまうことになります。
心不全
心房細動になると、脈が速くなってしまい、いわば心臓だけが勝手にマラソンを行っているような状態になります。短時間であればすぐに心不全には至りませんが、数日・数週間・数ヶ月と長時間持続することで、心臓が疲弊してしまい、心不全に至ります。
また長期間持続すると、心臓自体が大きくなってしまい、弁膜症などにも至るため、心不全を発症しやすくなります。
心房細動の症状は?
人によって感じ方は様々ですが、主に以下のような症状が挙げられます
- 胸がドキドキする
- 胸の辺りがざわついて不安
- 急に脈が速くなったり、乱れたりする
- 息切れ
- 倦怠感
- 胸の不快感
- めまい、ふらつき
上記の中の症状を訴えることが多いですが、なかには全く症状がなく健康診断で偶然見つかるというケースも少なくありません。
心房細動の原因
心房細動を発症する原因は様々ありますが、代表的なものを以下に挙げます。
- 加齢
- 過度な飲酒
- ストレス
- 高血圧
- 心不全
- 心臓弁膜症
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
特に年齢が上がるにつれて発症率が増えており、高齢化・長寿化に伴い罹患する方が増えています。
原因が明らかでなくても発症することがあり、「孤立性心房細動」と呼ばれます。
心房細動の病期
心房細動は、発症してどの程度の期間が経過しているか、で病期が分けられます。
1. 発作性心房細動
発症してから7日以内のタイプです。自然に正常な心拍に復帰することがほとんどですが、医療的な介入で正常な心拍を目指すこともあります。
2. 持続性心房細動
7日以上〜1年持続しているタイプです。自然にはおさまりにくく、医療的な介入により止める必要が出てきます。
3. 永続性心房細動
1年以上持続しているタイプです。長く持続するほど正常の脈に戻すことは難しくなり、血栓形成のリスクが高いため、無理にリズムを戻すことは目指さずに管理していくことが必要です。
この心房細動が続いたまま元気に過ごされる方もいらっしゃいますが、基本的に、長く持続するほど脳梗塞や心不全のリスクが高くなっていき、かつ正常な脈に戻すことが難しくなっていくため、できるだけ早期の治療介入が望まれます。
心房細動の検査
心房細動が疑われる場合、下記の検査を行います。
① 心電図検査
最も一般的で簡易的な検査です。症状が出ているときに施行することができればすぐに診断がつきます。
② ホルター心電図
24時間心電図を記録できる携帯型の機械をつけて、日常生活の中で起きる不整脈を見つけます。来院時に症状がなく、通常の心電図検査で捉えられない場合でも、観察できる時間を増やすことで不整脈を診断する確率が上がります。
③ 心エコー
心臓の働きが鈍っていないが、弁膜症がないか、血栓がないかなどを観察します。
痛みを伴わず、体への負担が少なくできる検査です。
④ 血液検査
甲状腺ホルモンが異常に分泌されていないか、心臓への負担がどの程度か、などを調べ、心房細動の原因や体への影響を調べます。
心房細動の治療
心房細動の治療の目的は、大きく分けて2つあります。
「脳梗塞を予防する治療」と「心臓のリズムや速さを整える治療」であり、先ほどお示しした大きな合併症を防ぐための治療です。
1.脳梗塞を予防する治療
脳梗塞の原因となる血栓をできにくくするために、血液をサラサラにする「抗凝固薬」の内服治療が必要です。
2.心臓のリズムや速さを整える治療
① 薬剤治療
速くなりすぎている脈を抑えたり、不整脈を抑えるために点滴薬や内服薬を使用します。
② 電気学的除細動
電気ショックをおこない、心臓のリズムを元に戻す方法です。鎮静薬を使用し、眠っている間に行いますので、ほとんど苦痛を感じることはありません。
③ カテーテルアブレーション治療
細い管(カテーテル)を、血管を通して心臓にたどり着き、心房細動の原因となっている異常な電気信号を出す部分を焼き切る(カテーテルアブレーション)治療法です。
入院での治療が必要ですが、体への負担は比較的少なく、根治的な治療を目指すことができます。
希望の場合は施行可能な病院に紹介させていただきます。
まとめ
心房細動は、放置することで取り返しのつかない合併症をきたしてしまうため、適切な治療が行われるべき疾患です。
検脈や心電図検査で比較的簡単に診断に辿り着け、治療によりそのような合併症の発症率を大きく減らすことができます。
少しでも気になる症状がある場合は、お気軽に当院へご相談ください。